水曜日, 12月 30, 2009

多機能・高機能化からエクスペリエンス重視へ

業界を振り返れるほど物知りなわけではないが、個人的な印象を書いてみる。

2000年代の前半のIT業界は、90年代から続く「多機能・高機能化」の時代だったと思う。
SonyのPlayStation2がゲーム業界を牛耳り、携帯電話はiモードをはじめとしたネット端末化が進み、音声認識や音楽再生プレーヤーなどの付加価値追求が見受けられた。

PCもWindows2000、XPと32bit化が進むことでパフォーマンスを追求されていた時代だった。

ウェブ業界もネットバブルを乗り越えた巨人たちのポータルサイト化が加速し、複数のサービス・ビジネスモデルに多角化することで、ネット業界そのものの自然成長を自社の成長へとつなげた。


一方で後半の5年間は「エクスペリエンス重視」の時代へと変わりつつあった期間かな、と思う。
NintendoがDSとWiiの先進的なインターフェースとそれを生かしたソフトウェアで、SONYを一気に抜き返して復権した。

2001年に発売されたiPodはそれ自体の機能はほぼそのままで、大容量化・小型化・多彩なデザインで幅広いユーザー層をカバーしつつ、iTunes Storeとの強固な垂直統合によってエンタメ業界のあり方までも変えてしまった。

携帯電話の多機能化戦争は飽和しコンテンツ戦争へとシフトした中で、AppleがiPodとMacで培った資産を投入したiPhoneによって"ネット端末としての携帯電話"へと強力に推進した。機能的には日本の携帯電話が備えていたものばかりだが、ここでもAppStoreとの垂直統合によって端末としての価値をユーザーとデベロッパー双方に対して変えてしまった。

PCもCPU性能やメモリ容量での差別化は陳腐化し、ソフトウェアが求める十分な機能を備えて、多様なシーンへの最適化が進んでいった。特筆すべきはネットブックであり、10年前はタワー型PCでも実現できなかった機能を片手サイズに放り込み、数分の一の価格で販売することで普及した。

ウェブ業界ではソーシャルサービスの勃興とともにポータルサイトではなく、特化型の専門サイトがユーザーと共にイノベーションを追求し急成長していった。一方でGoogleは圧倒的なパフォーマンスの検索連動広告の金脈を掘り当てて、そのシンプルすぎるウェブサイトとビジネスモデルだけでMicrosoftに対抗しうる力をつけていった。

要は「あれもこれもできます」という価値よりも、「これがびっくりするほど簡単にできます」とか「気持ちよくできます」とかそういった価値がユーザーに受け入れられ、多様化したユーザーニーズをそれぞれの領域で押さえていくということである。これから5年間はこの流れが続くのでは、と思う。

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